【6】あの日が訪れるまで

妊娠・死産
死産

この記事は、自身が経験した死産からどのようにして立ち上がってきたのか。お腹の中の娘が教えてくれたことを考えながら綴っています。経験したありのままを書くことで、誰かを不安にさせたり、傷つけてしまったらどうしようと悩みました。でも、私が同じ経験をした人から救いを得たように、今苦しんでいる誰かを助けることができれば、私と同じことになって欲しくないとの思いから、赤裸々に体験談を記事にしています。不安な方は、ここでストップしてください。

前回の記事「私は管理入院の必要はないの?」からの続きです。

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2022年1月1日 元旦

新しい一年の朝を迎えました。

もはや年が明けたのか、お正月という実感はありません。

ご飯もなにもない朝

お母さん!!!!と泣きたい気持ちになりました。

日本にいる母がつくるお正月の料理がどれほど恋しかったことか。

マルコは風邪を引いてしまい私にうつしたくなかったのか、些細な喧嘩もしてしまい、外に出かけてしまいました。 

昨晩もあまり食べれなかったせいか朝からお腹が空き 

もうお節とか関係ない。今日は食べたいものを食べよう!と思い

お腹の娘に何食べたい?と聞きながら

鍋焼きうどんをウーバーイーツで注文しようとアプリからひたすらお店を検索しました。

元旦だからなのか、ようやく鍋焼きうどんをメニューに見つけても

お店が開くのは午後5時から。

そんな時間まで待てない。

急遽メニューを変更して、私のお気に入りのカカアコのお店「Scratch」でカルアピッグロコモコとデザートにフレンチトーストのフルーツのせを頼むことにしました。

ブランチが届くのを楽しみにしていましたが、問題は、立つのもしんどいこの状態で、どうやってコンドの下まで受け取りに行くかです。

すぐそこまで来ているとアプリで通知がくると、

私は意を決して、全勢力を奮い立たせ、

パジャマのまま部屋を出ました。

立って待つことが辛い私は、エレベーターお願い!お願いだから早く来て!!と心の中で何度も唱え

最後の力を振り絞りコンドのセキュリティーゲートまで必死の思いで辿り着くと、

ウーバーイーツの人はまだ見当たりません。

どこにいるの?ウーバーさん!どこ?どこ?もう立ってるのが辛い!お願い早くきて!!

雨がザーザーと降り注ぐ中、私は泣きたくて今にも叫び出しそうでした。

大雨の中、一生懸命お料理を届けてくれたウーバーさんに、

死にそうになりながら「Thank you」とだけ伝えると、

あとはエレベーターを上がりうちに辿りつくことに全力を注ぎました。

ドアを開けソファーに倒れ込むようにもたれかけ、しばらく何もできなくなりました。

冷めないうちに食べないと。

デリバリーの箱を開けると、疲れを吹っ飛ばすぐらいに久しぶりに心がウキウキしました。

べビたん!美味しいね!もぐもぐ食べるんだよ!と言いながら

私は娘に栄養をいっぱい届けようと食べ始めました。

ですがなかなか思うほど食べれず半分ほどでフォークがとまりました。

もう明日にしよう。

私はそのまま夜まで眠り込んでしまいました。

毎晩楽しみにしていた心音確認も全身の倦怠感に押し潰され、なかなかできずにいました。

この頃の私はほとんど動けなくなっていたため、お腹にガスが溜まり、感覚も鈍くなり、

胎動も集中しないとよくわからなくなっていました。 

2022年1月4日

本当だったら3日から始まっていた仕事も体が辛くて休み、昨年の30日から仕事に行けていなかったこともあり、

私だけが怠けていてはいけないと思い

さすがに今日はいかないと。

それでも思うように動かない体を動かすのはとても大変で

まるで他人に乗っ取られているような感覚で

時間には間に合ず、遅刻していきました。

この頃は夜寝るのもままならなくなっていました。

横になると肺が圧迫されているような感覚で

シムスと呼ばれる横向き寝も息苦しく

ましてや仰向けは背中が剃るように痛く

たいしてお腹は大きくないのに

臨月は一体どうなってしまうんだろうか

果たして私は生きていることができるのか

妊娠は病気じゃないから

死ぬことはないよね?わたしは大丈夫だよね?

べビたん!とにかくあなたが元気ならママは大丈夫だからね!と何度も語りかけていました。

ベッドに横たわっても苦しくて眠ることができず

それでも翌日の仕事への影響も考え

必死に眠る努力をしました。

ついには、座りながら寝ることで

背中の痛みと吐き気を抑えようとしていました。

2022年1月5日

年末からずっと雨が続きシトシトとハワイらしくないお天気が続いていましたが

その日は久しぶりに青空が見えた日。

その夜、心拍音を確認しようと娘の居場所を探しましたが、

何かが違うと感じていました。

マルコに「それべイビーの音じゃない、自分の音じゃないの?」と言われましたが

私は「ううん。べビたんの音だよ。心臓大丈夫だよ。ちゃんと動いてるよ」と反論していました。

でも実を言うと、私は疲れのあまりもう馬が走るようなあの娘の鼓動の音がどんなであったか分からなくなっていました。

もう娘の音は聞こえていないかもしれないと思いながらも、

娘が動いている錯覚に陥っていました。

今思えば、それはお腹に溜まったガスがぐるぐると鳴っている感覚が、娘が動いているように感じていたのかもしれません。

背中も痛く肺も圧迫されて息苦しく、もう何もかもよく分からなくなっていました。

明日検診だから先生にお話ししよう。大丈夫。と自分を落ち着かせました。

2022年1月6日の検診日 妊娠25週

朝起きると頭がなんだかおかしいように感じました。

脳が浮腫んでいるような感覚。

足の股間は浮腫みで水風船がついているかのように垂れ下がっていました。

自分の体がこんなにも変化してしまい恐怖を感じました。

先生の診察前に血圧を測ると、ナースに「今日は低くなってよかったね!」と言われました。

血圧135

通常の血圧よりはもちろん高いですが妊娠高血圧症候群は140ぐらいを保つことが良いとされているため、それよりも低い血圧に少し驚いた感じでした。

先生は、過去1週間の血圧の記録を私に尋ね、

時々、上が190下が120くらいになると伝えると、 

「どうする?朝と晩に薬を半分ずつにする?」と聞かれ、私が自分で決めるものなのか?と不思議に思いながらも、新たな服用量が決まりました。

その後、いつものように赤ちゃんの心音確認です。

先生はなかなか見つけることができず前回のカルテを見直し、この辺かなと再度心音計をお腹にあてました。 

赤ちゃんの動きを感じているかどうか尋ねられ、

「体調が悪いし、歩けないし、お腹がずっと張っているので、赤ちゃんの音なのか、私の音なのか、よくわからないんです」と答えました。

そして初回の記事でお話しした、天から地へと落とされるあの瞬間がやってきたのです。

リンク:【1】流産を繰り返した後の死産

先生に死産の理由を聞くと申し訳なさそうに「体外受精と年齢のせいだ」と言われましたが、

私が泣きだすと「卵はまだあるの?」となだめるように尋ねられ、

私は「もうない…」と答えると先生はそれ以上何も言いませんでした。

そして 妊娠高血圧症候群がこの結果をもたらしたかどうかについては否定されました。

クリニックを後にし、私たちはそのまま真っ直ぐにビーチへと向かいました。

その車の中でマルコは運転しながら声を上げてまた号泣していました。

海へ着くと、裸足になり、足と手をつけ、ただ黙って下を向き

娘のことばかり考えていました。

どうしてお空にいってしまったの?

ねぇ?

どうして?

お願い!

帰ってきて!!

いやだー―――!!!!

いくつもの涙が落ちては、波と共に消えていきました。

次回は、お空に行った娘がこの世界に生まれるまでについて、新たな先生との出会いとともに綴っていきたいと思います。

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